TITLE「完全無欠のミステリー!全280冊」

kirindiary2005-12-24



 家人が「おみやげ」で買って来てくれた雑誌である。「年末年始に読みたいミステリー大全」という副題が付いている。そうそう、年末年始は大掃除よりもおせち料理よりもミステリだよね。当然、購入者はそれを承知してくれているに違いない。大丈夫!ちゃんと用意してあるから(ミステリだけは)。本人は全く中身を見ていないようではあるが……。


 さて、この雑誌は初めて拝見したのだが、今回の特集に限って言えば、実に「私好み」である。つまり、私って実に標準的なミステリ読者なのだろう。私を基準として、「ミステリ子午線」を作ってもらっても構わないくらいだ。
 まず、特集冒頭の恩田陸の文章(「成熟と回帰」)にある、「『作者の自己表現のため』の小説に振り回されるのはやめて、お客に木戸銭分の価値を約束する、プロの書いた面白いミステリを読もう」という呼びかけに深く頷きつつページをめくる。すると、偶然にも今年(いつもよりは)大目に読んだ東野圭吾と、今年出会えた最大の「収穫」である伊坂幸太郎、そして我が愛するどんでん返し作家ジェフリー・ディーヴァーのインタビューが続いている。この面子なんて、正に私好みではないか!ここに書かれた本人の言葉を見ると、なるほど共感するものが多い。三人に共通するのは、先に上げた恩田陸の言葉と同じ「読者を楽しませようとしている」ということである。彼等は一流のエンターテイナーたろうとしているのだ。これこそ、私の最も求めるものである。
 また、続く「ミステリー通37人が選ぶ『マイ・ベスト』 このミステリーもすごい!」も興味深い。各界の有名人・無名人(私が知らないだけ)が、それぞれのこれぞと思う三冊を挙げるという企画である。出版年やジャンルを問わぬセレクションを許したところが興を増している。
 「修道士カドフェルシリーズ」(エリス・ピーターズ)から三冊全てを選んだ竹内海南江(世界不思議発見)、恐ろしく男っぽいチョイスの児玉清、私も大好きな「時の娘」(ジョセフィン・テイ著・小泉喜美子訳)を選んでいる久世光彦、選択が重なっている光浦靖子鈴木紗理奈……選択や解説に見る個性に、親近感を覚えたり、意外性を発見したり、こうやって集められたものを見るって面白いものだなあ。
 この他にも、書店員が選ぶ今年のベスト10や、ライトノベルの「本格化」についての分析、「松本清張ミステリーツアー」などの企画が続く。うーん、ぎゅうぎゅうである。


 普段は作品そのものしか楽しまないけれども、たまにはこういうのもいいね……と思えた「おみやげ」であった。