ボビーZの気怠く優雅な人生

ボビーZの気怠く優雅な人生 (角川文庫)

ボビーZの気怠く優雅な人生 (角川文庫)

面白い本を読むに際しては、タイミングを見計らわねばならない。寝る前に少し読もう、などという理屈は通用しない。読み始めたら、止められないのだから。
しかし、読み始める前にそれが面白いかどうかなんて分からない。そんな訳で、今回もこの教訓を活かすことは出来なかった。ウィンズロウなんだから、推測できてしかるべきだったのだが……。


侵入は巧いが脱出が下手な泥棒ティム。伝説的麻薬王ボビーZに面差しが似ていることから、収監中に麻薬取締局からスカウトされる。ボビーZは最近死亡が確認されたのだが、取締局はその事実を伏せて、メキシコの麻薬商人に身柄を拘束されている局員との人質交換にボビー(=ティム)を使いたいのだと言う。
そんな役目は御免と主張したいティムではあるが、最近監獄の中で正当防衛のためヘルズエンジェル(暴走族)の男を殺してしまった。このまま塀の中にいても、奴らの仲間に殺されてしまう。仕方なく替え玉を引き受けたティムだが、いざ人質交換に赴くと、突発的銃撃戦に巻き込まれてしまう。そこから逃れはしたものの、今度はある小物の麻薬商人に客分扱いで国境の邸宅に軟禁されてしまう。無論、ボビーとして。
さあて、どうする。砂漠のどまんなか。替え玉がバレれば殺されるが、ボビーZとしてもどのみち狙われている。逃げられるか?生き延びられるか?
現役にして伝説の男に扮するケチなこそ泥が、生命と自由と気まぐれな愛情のために、砂漠に街に全身で頑張る物語。秘密を知るティムを負う麻薬取締局員、仲間の復讐に燃えるヘルズエンジェル、理由が明かされぬままボビーZをこよなく憎む麻薬商人、麻薬取締局に騙されて暗殺者を派遣するメキシカン・マフィア、使い込みを知られたくないボビーZの仲間……追っ手は次から次へと現れる。しかし、ティム自身の過酷な旅の道連れは、九歳の少年。そして、敵か味方か美女一人。
最終盤、登場人物入り乱れての大混乱を淡々と描く筆致はさすがウィンズロウである。こそ泥の割にティム強すぎとか、あまり気にしてはいけない。わくわくさせてくれて、読後もすっきりの快作であった。満足。★★★★☆


既に映画化が決定している「ニール・ケアリー」のシリーズ同様、本作も映画化が検討されているとのこと。ぜひきちんと忠実に作って欲しい。そうしたら、大ヒット間違いなしのアクション大作が完成するだろう。頼むよ〜。